2009年6月16日火曜日

sado, niigata. 佐渡、新潟 その③

アンケートの1問目は「今のままでは佐渡はどうなっていくと思うか?」といったものだった。これは、総合計画に載っている「このままでは~となると思われる」という項目や、市が提供してくれた市の人口予測が基本的には悲観的なものになっているのに対応し、実際に市民はどう感じているかを尋ねるためのものである。ちなみに、将来の人口予測は佐渡を訪問するまでは入手しておらず、私自身がやるつもりでいたが、初日に頂けたのでそれを利用した。ちなみに、人口予測に関してはPDEPROJ2というソフトが簡単にダウンロードでき、そこに0-4,5-9,10-14…のような5歳間隔の人口分布と、合計特殊出生率(TFR)、平均寿命、移住率を入力すればある程度の予測ができる。実際にこのプログラムは大学院のFutures Studiesという授業で使ったし、信頼できるサイトが提供しているのでそれなりに信頼のあるものだとは思うが、詳しいことはよくわからない。

少々脱線したので戻す。佐渡市に頂いた人口予測によると、2035年には36590人と、2005年の67386人と比べ54%まで減少し、ピークであった1950年の125597人と比べると約29%である。ちなみに、現在の人口はすでにピーク時の約54%に減っている。各種産業に関して言っても、総合計画には農業、林業、漁業の衰退や中心市街地の空洞化、観光客数の減少など、確かにネガティブなイメージのものが多く書かれている。

で、実際に市民の皆さんはどう感じているかをうかがった。複数回答ありで、結果は以下のようになった。(-)は回答数。トップ10

  1. 高齢化が進む(40)
  2. 人口の流出・減少(31)
  3. 過疎化が進む(22)
  4. 若者が減る(15)
  5. 少子化(13)
  6. さびれる・衰退する(11)
  7. 元気・活力・活気がなくなる(8)
  8. だめ・おわり & 職場・仕事が減る(7)
  9. コミュニティーが壊れる・持続不可能になる & 観光客が減る(5)
  10. 第二の夕張 & 一次産業が衰退 & 限界集落が増える & 沈没する(4)

それ以外には

  • 現在「自然や純朴さを残す」か「観光化・多様性」のどちらかを選ぶ岐路にある
  • 一次産業に活路を見出す政策と歴史文化への手当が必要
  • 鬼太鼓など、独自の芸能や風俗文化を保護・伝承することにより、集落・住民の意義や目標をつくる
  • 交流人口を増加させる
  • 仕事そのものが中国など労働力の安い国に取られてしまっている

など、課題や対策を講じて頂いた回答もあった。

逆に、とてもポジティブな回答もいくつかあった。

  • 楽しくなる・いい感じのモデルとなる(3)
  • 若者が増える(2)

この回答をしてくれた方は多くがIターンの方のように感じた。実際に、アーティストの方や、農業に魅力を感じる若い人たちで佐渡の良さに魅かれて住み始めた方とお話をして、そのようなコミュニティーができてきているからこそ、そう感じるのかなと思う。また、もともと佐渡の方も、最近は高校卒業してからそのまま佐渡に残る同級生や後輩が多いように感じると言っていた。

また、今と変わらないと答えた方も4名いた。

この質問をしてみて、良くも悪くも驚いたことは、佐渡の方々がとても客観的に佐渡の未来に希望があまりなさそうなことを答えていたことである。もちろん、ポジティブな回答の人も中にはいたけれどまだまだ少数派で、現実のままではまずいという考えを多くの方が実感しているようだ。確かに、「このままでは・・・」という質問がネガティブな方向に誘導してしまっているように感じるのは否めないが、それでも多くの住民が佐渡の未来に悲観をしていた。

ここまではアンケート結果、そしてここからは私の一方的な考えである。

ただ、観光客が減る、人口減少・いわゆる「過疎化」する、ということが、本当にネガティブなことなのだろうか。これに関し、私がインタビューしたトレッキングガイドのAさんは、「100万人が50万人になったのなら、その50万人を2倍長く滞在させればいい」と仰っていた。延べ宿泊客数を増加させる作戦だ。かしこい。ただ、市として、観光協会として、その戦略があまり思いついていないのが現状のように感じる。

そこで、私は「何もしない」という戦略を提案する。佐渡のブランディングはその次のステップでの戦略。

実際、私は1週間の佐渡滞在予定を2週間に延ばし、それでもまだまだ滞在したいと感じた。それでもまだまだ見足りないと感じた。つまり、2倍長く滞在した。Aさんの作戦にはまった感じだ。これは、間違いなく、佐渡に住む面白い人たちとお話をして、すればするほど新しく見えていない部分がたくさん見えてきて、そこにどんどん魅力を感じていったからだと思う。このような体験を、半減した観光客に体験させるのが「何もしない」戦略である。具体的に言うと、観光客にノープランで来てもらう。そして、運でコネを築いてもらい、それをフル活用した観光をしてもらう。今までの「両津港着→大野亀→尖閣湾→相川の金山→たらい舟→両津港発」といった定番コースだけが佐渡じゃないことをアピールするにはこれがもしかした一番いいんじゃないか・・・とほぼノープランで訪問し、運よくいいコネクションができ、とても有意義な滞在ができた私は思う。もちろん、あんなに充実したのはホストのTさんをはじめ、たくさんの素敵な方々に助けて頂いたおかげではあるが、そこにたどり着いた自分の強運もすごいと思う。こればかりは日ごろの行いがモノを言ったのかもしれない・・・なんて調子にのる。とにかく、佐渡側が「佐渡のここを見てください」と言うことにより、自らの限界を設定してしまうこともありうるわけだから、訪れる側が「佐渡のここを見たい」と思ってきてもらい、佐渡側がその情報に+αの情報を上乗せして提供することにより、観光客がどんどんと佐渡の良さを発見し可能性を広げていき、結果的にもっと長居させる、というのがこの戦略である。かなり他人任せだけれど。

また、人口が減少すること=過疎化、というイメージを払拭することも大切である。酒の席でSさんが「過疎って言葉は嫌いだ。論文書くときには『田舎』って書きな!!」と言っていた。だから、"Inaka"の提唱である。これも賢い。過疎と聞くと日本人はきっと反射的にネガティブなイメージを抱く。むしろ、憐みの対象にさえなりうるのではないか。けれど、田舎と聞く日本人が同じ反応を示すとは私は思わない。もっと親しみのある言葉の感じだ。田舎っぺのように小馬鹿にするのも愛情があるからこそできることだと思う。過疎という言葉でこうはできない。

田舎だからこそできること・田舎でなければできないこと、こういうものを佐渡の良さとして佐渡人が理解し、佐渡を訪れる人々が素敵な田舎を楽しめる雰囲気を島民が創り出していくことが必要なんだと思う。どうすればいいかというと、ここでブランディングである。それも通常する外部へのブランディングではなく、佐渡内部へのブランディングである。そうすることにより、訪れる観光客に自信を持って自分の好きなところを紹介できるようになるのではないだろうか。具体的にこのブランディングをどのように実施するかということは、これから勉強します。

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